本記事では、2024年11月の為替市況について解説いたします。
テクニカル分析も重要ですが、FXは外貨と外貨の両替による取引で損益が発生します。
そのため週間レポートは、通貨の売買を促すきっかけとなるファンダメンタルズ(経済/金融の流れ)中心の見解となります。
各週の相場状況・重要トピックスについて解説します。
2024年11月11日~11月15日
①(月)ドル高
- トランプトレード継続
- 材料が無い状況
- ドル円は153.950円付近まで上昇
②(火)ドル高
- マルコ・ルビオショック
- 時期トランプ政権にて国務長官就任
- 対中強硬派で政策を進める人(中国から入国規制)
- 「関税を引き上げる」動きとして他国の株価が下落
③(火)ユーロ安
- ドイツの他国依存
- エネルギーは「ロシアに依存」
- 経済は「中国に依存」
- 中国と米国の関税問題による影響でドイツ株にも影響
④(水)BTC高
- 史上最高値更新
- 93,000ドルを突破
- 日本円でのレート1400万円
- デジタルゴールドであるBTCに資金移動か?
⑤(水)ドル安→ドル高
- 経済指標
- CPI前月比:予想+0.2% 結果+0.2%(前回+0.2%)
- CPI前年比:予想+2.6% 結果+2.6%(前回+2.4%)
- CPI前月比・コア:予想+0.3% 結果+0.3%(前回+0.3%)
- CPI前年比・コア:予想+3.3% 結果+3.3%(前回+3.3%)
- CPI前月比・スーパーコア:結果0.314%(前回0.404%)
- CPI前年比・スーパーコア:結果4.377%(前回4.265%)
- 最初は売られたが買い戻しが入る
⑥(水)ドル高
- 要人発言
- 「利下げ」をしていく姿勢
- ただ大幅な利下げはNG
- 段階的に引き下げていく予定
- 若干タカ派
⑦(木)ユーロ安
- 要人発言
- デギンドスECB副総裁
- 12月利下げ方向で捉えられている
- 23年10月30日の重要ラインをどのように反発するか?
⑧(木)ドル高
- 経済指標
- 新規失業保険申請件数:予想22.3万件 結果21.7万件(前回22.1万件)
- PPI前月比:予想+0.2% 結果+0.2%(前回±0.0%→+0.1%)
- PPI前年比:予想+2.3% 結果+2.4%(前回+1.8%→+1.9%)
- PPI前月比・コア:予想+0.3% 結果+0.3%(前回+0.2%)
- PPI前年比・コア:予想+3.0% 結果+3.1%(前回+2.8%→+2.9%)
- 強い結果でドル高
⑨(木)ドル高
- パウエルFRB議長発言
- 経済は目覚ましく良好
- 利下げを急ぐ必要がない
- 156.420円まで上昇
⑩(金)ポンド安
- 経済指標
- 英第3四半期GDP【前期比】:予想+0.2% 結果0.1%(前回+0.5%)
- 英第3四半期GDP【前年比】:予想+1.1% 結果1.0%(前回+0.7%)
- 月次英GDP:予想+0.2% 結果-0.1%(前回+0.2%)
- GDPが弱かったこともありポンド安へ
⑪(金)ドル高
- 経済指標
- 小売売上高・前月比:予想+0.3% 結果+0.4%(前回+0.4%→+0.8%)
- 小売売上高・コア前月比:予想+0.3% 結果+0.1%(前回+0.5%→1.0%)
- NY連銀製造業景気指数:予想-0.7 結果+31.2(前回-11.9)
- 輸入物価指数(輸入):予想-0.1% 結果0.3%(前回-0.4%)
- 輸入物価指数(輸出):予想+0.3% 結果0.8%(前回-0.1%)
- 瞬間的にドル高・金利上昇
- 利確組・ポジション解消が入ったのか、ドル円・クロス円が大幅下落
米国の議会選挙にてトリプルレッド(大統領・上院・下院が共和党)となり、インフレが上昇する可能性が示唆され、パウエル氏の発言により金利が上昇する事でドル円は大きく上昇することになりました。
しかし金曜日には大幅なポジション解消の動きが出たのか、大幅下落して引けています。
値幅は約4.12円(412pips)となり、現在ドル円は154円台を推移して引けています。
ではメイントピックスである
- 「米議会選挙・トランプ陣営」
- 「パウエル氏の発言」
についてまとめます。
米議会選挙・トランプ陣営
米議会選挙にて、民主党の最後の望みでもあった「下院の過半数」を打ち砕き、僅差ではありましたが下院も共和党が多数派になったことによって、「トリプルレッド」になりました。
これで次期トランプ大統領になると、スムーズにトランプ氏の政策が可決されやすくなります。
※トリプルレッド・・・米国で大統領職と上下両院の多数派を共和党(シンボルカラーがレッド)が占める状態
米国では予算案や法案を成立させるには上下両院の可決が必要なため、大統領の掲げる政策を実現しやすくなる状況となりますので、次期トランプ政権では、インフレが再燃するような政策が多い為、なかなか利下げがしにくくなるのでは?というマーケットの思惑もあり、ドル高が続いたという内容になります。(トランプトレード)
そして次期トランプ大統領の陣営が決まってきていますが、その人選についてドル高となるきっかけもありました。
当然トランプ氏の考えに沿った人選になりますが、一例を挙げると「マルコ・ルビオ氏」になります。
トランプ氏、ルビオ氏ら対中強硬派起用へ-国務長官と国家安保補佐官
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-11-12/SMTE5HT0AFB400
マルコ・ルビオ氏は、現在上院議員をしておりまして、次期トランプ政権では国務長官として就任することが決定しました。
マルコ・ルビオ氏は対中強硬派と知られており、中国から入国規制されている人物であり、中国とイランを敵に回してでも政策を推し進める人として有名な人物です。
この報道にて中国株が下落することになり、日経平均含め、世界的に株が引っ張られるように下落する流れとなります。
やはりトランプ氏の政策である「関税を引き上げる」動きとして他国の株価に動きが見られました。
そして関税を引き上げるということは、物価高(インフレ)を押し上げる政策になってしまうのでドル高要因に繋がり、ドルが買われ続けました。
パウエル氏の発言
パウエルFRB議長、利下げ急ぐ必要ない-経済は目覚ましく良好
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-11-14/SMYI8CDWX2PS00?srnd=cojp-v2
パウエル氏は、「経済は目覚ましく良好の為、利下げを急ぐ必要がない」とのタカ派発言。
この発言により米長期金利が上昇し、ドル円も意識されていた直近高値を更新する流れとなり、156.420円まで上昇することになりました。
※(15日午前時点)FedWatch(17日時点では61%を推移)
マーケット目線では、「12月の利下げの見送り可能性も出てきた」ということで、FedWatchでは前日利下げ織り込み80%以上あった状況でしたが、発言後は60%を割り込む所までダウンしている状況です。
まとめ
(対ドル騰落率)
2024年11月11日~は、全面ドル高の週間となりました。
米大統領選、米CPIやPPIも通過し、トランプ氏が政策に掲げる関税強化より、欧米・オセアニア通貨は売られやすい結果となっています。
またGBPUSDは、年初来最安値を更新しています。
対日本円では、金曜日に大きく買いが入ることで結果的には主要通貨に対して強くなりました。
今週はトランプ氏の閣僚人事の動きや日米の要人発言が予定されていますので、ドル高の展開が続くか?に注目をしていきます。
2024年11月4日~11月8日
①(月)ドル高
- 米大統領選&中東情勢
- ドル円は70pipsほどのギャップを空け
- アイオワ州の世論調査でハリス氏優勢の報道
- ヒズボラとイスラエルの停戦案について受け入れ拒否
②(火)豪ドル高
- RBA政策金利&声明発表
- 据え置き(435bp)
- 基調的インフレ率はなお高過ぎる
- 金利「当面」景気抑制的に維持する必要があり
③(火)ドル安
- 大統領選挙前
- 利益確定などの売りも入る
- ドル安の流れが前日から継続
④(水)ドル・株高・BTC高
- 大統領選挙(投開票日)
- リアルクリアポリティクスにてトランプ氏の勝利が公表
- ドル円は1.5円(150ipips)の上昇
- ノースカロライナ州でトランプ氏が勝利
- ドル円は一気に154円まで上昇
- ジョージア州やペンシルベニア州などでトランプ氏勝利
- 154.379円まで上昇
⑤(水)ポンドドル・ユーロドル・オージードル・ゴールド安
- 大統領選挙(投開票日)
- トランプ氏の歴史的勝利
- トランプ氏の政策による影響
- ゴールド96ドル(9600pips)の大幅下落
⑥(木)ポンド高
- BOE政策金利&声明発表
- 結果:25bp利下げ(475bp)
- 市場の予想通り25bpの利下げ
- 声明文の中で1年後や2年後のCPI予想が上がっている事
- 今後あまり大きな利下げができないとマーケットは判断
⑦(木)ドル安
- トランプトレードの巻き戻し
- 大統領選挙にて3.4円上昇してからの売りが入る
- ドル円の値幅に関しては2.0円(200pips)ほどの下落
- 米長期金利の低下が影響
⑧(木)ドル安
- FOMC
- 結果:25bp利下げ(475bp)
- 特に大きなサプライズがなかった
- 今後の利下げに関しても「会合ごとに決定していく」とい流れ
- 労働市場の状況は全般的に緩和している
- 当面の金融政策決定に「何ら影響しない」
- 152.851円まで下落することになる
⑨(金)ドル安
- トランプトレードの巻き戻し継続
- トランプ氏が再戦して以降の「sell the fact」
- 152.131円までドル円は下落
⑩(木)ドル安
- 経済指標
- ミシガン大学消費者信頼感指数:予想71.0 結果73.0(前回70.5)
- 1年先期待インフレ:予想2.7% 結果2.6%(前回2.7%)
- 5年先期待インフレ:予想3.0% 結果3.1%(前回3.0%)
- ドル円は152.371円まで下落
米大統領選挙とFOMCが開催された週で、各通貨ペア共に乱高下となりました。
ドル円の値幅は約3.5円(350pips)となり、現在もドル円の方向感は明確に出ていない状態です。
ではメイントピックスである、
- 「米大統領選挙」
- 「FOMC」
についてまとめます。
米大統領選挙
まずは東京時間9:00頃から開票スタートということで、選挙戦に定評がある「リアルクリアポリティクス」にてトランプ氏の勝利が公表され、米長期金利が急騰することになり、ドル円は1.5円の上昇をすることになりました。
ドル円は153円を突破し、その後激戦州であるノースカロライナ州でトランプ氏が勝利と伝わると再び買われる展開となります。
一気に154円まで上昇することになり、大きく加速することになりました。
短期間で上昇しすぎたことで利確勢により153円後半まで落ちることはありましたが、次の激戦州であるジョージア州やペンシルベニア州などでトランプ氏勝利との報道があり、再度ドル円上昇という形になり154.379円まで再浮上することになり、ドル円は底値が固い動きを続けることになりました。
トランプ氏が勝利宣言をしてから、ドル買いの勢いが止まらず「株高・円安」が続いた1日となりました。
そして株・為替以外では「ビットコイン」も急騰することになり、最高値更新をする動きとなります。
ドルストレート通貨は大きく下落することになります。
ユーロドル・ポンドドル・オージードルも下抜けします。
特に大きく下落したのはボラティリティが高いゴールドですが、96ドル(960pips)の大幅下落となり、6月以来の大幅安を記録することになります。
トランプトレード、あらゆる市場で噴出-株、ドル、ビットコイン
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-11-06/SMIQCHT0G1KW00
そして6日の引け前にはハリス氏が敗北を認め、トランプ氏に祝意を伝える形となり、トランプ氏が大統領に返り咲く結果となりました。
ハリス氏、米大統領選での敗北認める-トランプ氏に祝意伝えたと言明
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-11-06/SMJT86T0G1KW00
トランプ氏がホワイトハウス復帰を確実にしたので、上院では共和党が多数派となる見通しとなっていますが、民主党にとっての最後の頼みの綱は「下院」の議席を取ることになります。
ただ激戦が続いており現状では不明ですが、下院も共和党になると「トリプルレッド」、つまりトランプ大統領(共和党)・上院(共和党)・下院(共和党)となり、「ねじれ」が無くなることで、トランプ氏の政策や意見が通りやすくなるということになります。
そこで注目されるのは、トランプ氏が公約に掲げてきた「減税や関税引き上げ」の影響で物価圧力が高まり、再度インフレが加速する可能性があるということ、そしてそれに伴う「財政赤字を拡大」させ、国債増発を引き起こすのでは?との懸念点が出ているということになります。
FOMC
【結果】
- 結果:25bp利下げ(475bp)
FOMC声明:インフレ2%目標に向け進展、労働市場はおおむね緩和
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-11-07/SMLH1MT0G1KX00
FOMC、連続利下げ-トランプ氏が辞任求めてもパウエル氏拒否
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-11-07/SMLGTWDWRGG000
結果はマーケットの予想通り25bpの利下げとなりました。
特に大きなサプライズがなかった事からそこまでの動きには繋がりませんでした。
今後の利下げも「会合ごとに決定していく」という変わり映えの無い内容で、今後の具体的な利下げ幅に対するヒントや言及もありませんでした。
声明文ではインフレが持続的に2%に向かいつつあることに関しては「自信を深めている」との文言が削除されて、インフレはFRBの目標に向けて「進展した」と変更されています。
一方、雇用については前回の声明で毎月の雇用増の鈍化を指摘していたのに対し、今回は『労働市場についてより広い観点から言及』することになりました。
失業率は引き続き低水準にあるとしながらも、「労働市場の状況は全般的に緩和している」としています。
会見でも雇用の鈍化に言及することが多く、ややハト派的なスタンスかな?という印象。
米大統領選の結果では、当面の金融政策決定に「何ら影響しない」と発言しており、トランプ氏から求められたら議長を辞任するのかとの記者の質問に対し、「ノー」と回答していました。
まとめ
(対ドル騰落率)
2024年11月4日~週は、マチマチの結果となりました。
メインイベントである『米大統領選・FOMC』と続きましたが、トランプ氏勝利により関税強化で経済の縮小が見えるユーロが大きく下落することになりました。
FOMCでは、ある程度マーケットの予想通りという事で市場の動きも限定的な結果となります。
今週は、米CPI・小売売上高と続きますがよほどの事がない限り大きな動きは無いと想定されます。