
本記事では、2025年6月の為替市況について解説いたします。
テクニカル分析も重要ですが、FXは外貨と外貨の両替による取引で損益が発生します。
そのため週間レポートは、通貨の売買を促すきっかけとなるファンダメンタルズ(経済/金融の流れ)中心の見解となります。
各週の相場状況・重要トピックスについて解説します。
2025年6月2日~6月6日
①(月)ドル・株安スタート
- 地政学&要人発言(ウォラーFRB理事)
- 関税への不確実性が無くなれば「利下げ」をすることはできる
- ウクライナによるロシアへの大規模ドローン攻撃
②(月)ドル安・株高
- 経済指標&報道
- 米国、一部中国製品への関税停止を8/31まで延長
- 米中週内に電話会談の公算
- ISM製造業景況指数:予想49.3 結果48.5(前回48.7)
- 予想を下回り前回から小幅悪化(ドル円142.500円付近)
③(火)円安
- 植田日銀総裁発言
- 利上げを決め打ちしているつもりない
- 無理に利上げをすることはない
- 2%の物価目標の達成に向けて数字が整えば「利上げ」
④(火)ドル高
- 経済指標
- JOLTS:予想7100千件 結果7391千件(前回7192千件→7200万件)
- 前回も上方修正だったことも好感
- ドル円は144円台にのせる動き
⑤(水)ドル安
- 経済指標
- ADP雇用統計:予想+11.2万人 結果+3.7万人
- ISM非製造業景況指数:予想52.0 結果49.9(前回51.6)
- 金利が大幅に低下
- ドル円は142円台後半まで下落
⑥(水)ドル安
- 地政学リスク
- ロシア報復を考えている
- 米中首脳の電話会談がされるかわからない
- 上記はトランプ氏の発言から
⑦(木)ユーロ高
- ECB政策金利&声明発表
- 結果:25bp利下げ(215bp)
- ECB声明:成長リスクは下方向に傾いている
- ラガルド氏:利下げ局面の終わりに差し掛かっている
- ユーロが上昇
⑧(木)ドル安
- 経済指標
- 新規失業保険申請件数:予想23.5万件 結果24.7万件
- 米貿易収支:予想-700億 結果-616億(前回-1405億→-1383億)
- 労働生産性【改定値】:予想-0.8% 結果-1.5%(前回-0.8%)
- 単位労働費用【改定値】:予想+5.7% 結果+6.6%(前回+5.7%)
- ドル円142.700円付近まで下落
⑨(木)ドル高&株高
- 米中首脳の電話会談
- ドル円に関しては143円後半まで上昇
- 米株価に関しても大きく上昇
- 両首脳は誤解の解消に取り組む必要性を強調
- 内容に関しては公表されていない
- リスクオン相場に動く
⑩(金)株安
- トランプ氏とマスク氏の対立が激化
- 減税案をめぐる対立
- 電気自動車(EV)購入時の税控除を前倒しで終了
- テスラの年間利益に12億ドルの打撃
- 「減税案」に対してマスク氏は批判
- トランプ氏から政府契約の解除が示唆
⑪(金)ドル高
- 雇用統計
- 雇用者数:予想+13.0万人 結果+13.9万人(前回+17.7万人→+14.7万人)
- 失業率:予想4.2% 結果4.2%(前回4.2%)
- 平均時給(前月比):予想+0.3% 結果+0.4%(前回+0.2%)
- 平均時給(前年比):予想+3.7% 結果+3.9%(前回+3.8%)
- 米長期金利が上昇
当該週の為替相場は連日ドル高安が発生するレンジ相場となりましたが、金曜日の米雇用統計で大きくドル買いが入る流れになります。
ドル円の値幅は約2.7円(270pips)となり、144円後半を推移している状況です。
では今回のメイントピックスである、「ECB政策金利」「今週の米国」「米雇用統計」についてまとめます。
ECB政策金利
ECBが0.25%利下げ、過去1年で8回目 緩和サイクル一時停止を示唆
https://jp.reuters.com/markets/japan/funds/62RFIOG6GJMUZG3MUW3PE2WKMY-2025-06-05/
- 結果:25bp利下げ(215%)
結果はマーケットの予想通りである25bp利下げとなりました。
インフレ率が2%を下回る水準に落ち着き、米国の関税措置がユーロ圏経済に打撃を与えていることを背景に、景気下支えを考えての利下げになります。
ECBが8回目の利下げ、サイクル終わりに近づくとラガルド総裁
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-06-05/SXDU30DWLU6800
ラガルドECB総裁は、「成長リスクは下方向に傾いている」とハト派な意見もありましたが、「利下げ局面の終わりに差し掛かっている」との見解を示したことで、ユーロ買いが入ったことになります。
ユーロドルは米国の経済指標の結果も影響しましたが、発言にてユーロ買いも入り直近高値を上回り大きく上昇することになります。
今週の米国
米中首脳、さらなる協議で合意-レアアースで理解深めたとトランプ氏
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-06-05/SXDVZNT1UM0W00
水曜日にトランプ氏が中国との電話会談にて「関税をしないかもしれない」という報道が入りましたが、結局は電話会談が開催されることになり、ポジティブサプライズにて相場は一気にリスクオンの状態になりました。
ドル円は143円後半まで買い上げられ、米株価も大きく上昇することに。
リスクオフに関わる通貨(金、円、BTC)などは大幅に下落することになりました。
【習・中国国家主席】
- 米国は中国へのネガティブな措置を解除するべき
【トランプ米大統領】
- 習近平国家主席と約1時間半にわたり会談し、両国にとって非常に前向きな結論に至った
- レアアース製品の複雑さについて、もはや疑問の余地はないはずだ
- 習近平国家主席から妻とともに訪中の招待を受けた
- 中国を訪問する意向
- 中国人留学生を歓迎する
- 中国と貿易協定については非常に良好な状態にあると思う
両首脳は誤解の解消に取り組む必要性を強調し、互いの訪問を歓迎する姿勢を示しました。
マスク氏、トランプ氏との対立沈静化を示唆-Xユーザーの投稿に反応
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-06-05/SXE5V8DWRGG000?srnd=cojp-v2
トランプ氏とマスク氏の対立が激化することになります。
トランプ大統領の大型減税・歳出法案には、電気自動車(EV)購入時の税控除を前倒しで終了する内容が含まれています。
トランプ減税法案では、7,500ドル(約110万円)のEV税額控除は当初の予定より7年早く、今年末までの大幅な縮小・廃止が盛り込まれており、テスラの年間利益に12億ドルの打撃になるとして見込まれています。
この法案に対して「愚策・馬鹿げている」などと、イーロンマスク氏が否定したことが始まりとされており、対立しているのか?と言われていましたが今回で確定となりました。
政府契約の解除が示唆され、木曜日にテスラが▲14.2%の暴落となり、ナスダックにも影響して大きく株価指数に影響を及ぼしています。
トランプ大統領は6日金曜日、記者団に対してマスク氏が率いるスペースXなどの企業への補助金や契約の打ち切りについて問われ、「すべて検討する」と述べました。
トランプ氏、プーチン氏の対ウクライナ報復警告明かす-会談後に投稿
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-06-04/SXCC5XT0AFB400?srnd=cojp-v2
【トランプ米大統領】
- プーチン露大統領と1時間15分話した
- プーチン露大統領との会話は和平に結びつくものではない
プーチン大統領は、最近の空軍基地に対する攻撃に「反撃せざるを得ない」と強い語調で言明していたみたいです。
そして木曜日には、以下にて現在の所は停戦を諦めている状況。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-06-05/SXE76WT1UM0X00
【トランプ米大統領】
- ロシアとウクライナ「幼い子供のケンカ」
- 即時和平「望むが、そうはならない」
- 支援継続「ウクライナとともにある」
米雇用統計
【結果】
- 雇用者数:予想+13.0万人 結果+13.9万人(前回+17.7万人→+14.7万人)
- 失業率:予想4.2% 結果4.2%(前回4.2%)
- 平均時給(前月比):予想+0.3% 結果+0.4%(前回+0.2%)
- 平均時給(前年比):予想+3.7% 結果+3.9%(前回+3.8%)
【ドルの本来の動き】
- 雇用者数:ドル高要因(前月より減っているが予想は上回る)
- 失業率:ドル横ばい
- 平均時給(前月比):ドル高要因
- 平均時給(前年比):ドル高要因
米雇用統計、労働市場の緩やかな減速示唆-賃金は予想上回る伸び
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-06-06/SXFPIZT0G1KW00
雇用統計の結果は強く、発表直後はドル高で反応します。
雇用者数は前月より低下しているものの、予想を上回る強い数字ということでドル高で反応したとみられていますが、しかし気になるのが5月▲3万人の下方修正分になります。
4月修正が▲5万人程度だったので、合計すると2ヶ月で▲8万人ほどの修正が入っている結果となります。
ですので、今回の13.9万人に対してさらに来月も下方修正があると、雇用統計の指標自体に疑いの目が向けられそうな変動になります。
そして失業率は、ひとまず今回の水準(4.2%)は問題ないと見ています。
FRBの見立てによると、半年後の失業率は現在の4.2%から若干悪化して4.4%になりますが、その後はほぼ横ばいが続くとのこと。
失業率が5%台に突入するとマーケットには結構なネガティブ材料として捉えられそうな数字になります。
そして問題が平均時給になります。
この数字が出てしまうと、なかなか「利下げ」に向けて動きづらい印象です。
現在FRBは経済指標データとトランプ大統領の板挟みとなっており、土曜日にもトランプ氏は「1%利下げするべき」と圧力をかけている状況です。
ですが、給料が上昇している状態なので、CPI(インフレ)が更に加速していく流れになるかもしれない(関税の不確実性もある)ので、なかなか利下げを選択はしづらい状況だと言えます。
今回の雇用統計の発表を受けて、FedWatchでは年内2回の予想に変化はありませんでした。
まとめ
2025/6/2~週は、主要通貨に対して全般ドル売り、円の独歩安となりました。
月初の週という事で多くの経済指標が発表されましたが、全体的にはマチマチの結果でした。
ECBでは7会合連続の利下げを発表し、ターミナルレートが見え始めました。
「ターミナルレート(Terminal Rate)」とは、中央銀行が利上げ(または利下げ)サイクルの最終到達点となる政策金利水準を指します。
オプション市場で用いられるIV(インプライド・ボラティリティ=予想変動率)が低下しており、市場は今後の値動きが限定的になるとの見方を織り込みつつあります。
今週は米CPI、PPIなどが予定されていますが、強い結果となった場合のドル買いに注意。
また米国の「為替報告書」にて、日銀の金融引き締めに関して「円の対ドルでの弱さの正常化と、二国間貿易の構造的な不均衡に支援材料」との文言があります。
さらなる円安は望まれていないような表現となります。
さらに6/17-18のFOMC前に、FOMCメンバーはブラックアウト期間に突入しています。
全体的には材料不足による限定的な値動きを想定し、ターミナルレートが見え始めたEUR買い、円・フラン買いがメインシナリオです。
(ただし、短期的なドル買いにも要注意。)