本記事では、2024年9月の為替市況について解説いたします。
テクニカル分析も重要ですが、FXは外貨と外貨の両替による取引で損益が発生します。
そのため週間レポートは、通貨の売買を促すきっかけとなるファンダメンタルズ(経済/金融の流れ)中心の見解となります。
各週の相場状況・重要トピックスについて解説します。
2024年9月9日~9月13日
①(月)ドル高
- 雇用統計の巻き戻し
- 雇用統計の下落からの巻き戻し
- 日経平均株価の上昇による連れ高
②(火)ポンド高
- 経済指標
- 雇用者数:予想11.5万人 結果26.5万人(前回9.7万人)
- 失業率:予想4.1% 結果4.1%(前回4.2%)
- 平均賃金:予想5.1% 結果5.1%(前回5.4%)
③(火)円高
- 日経平均下落&米長期金利低下
- 日経平均株価が下落
- 米長期金利低下による下落
- ドル円は一時142.200円まで下落
④(火)原油安
- OPEC世界需要見通し
- 原油の需要見通しを下方修正
- 原油先物が68ドルから65ドルまで下落
⑤(水)円高・ドル安
- 中川日銀審議委員発言&大統領選挙討論会
- 中川氏:見通しが実現していけば緩和度合いを調整していく
- トランプ氏劣勢からのドル売り
- ドル円140.723円まで下落
⑥(水)ドル高
- 経済指標
- 米CPI前月比:予想+0.2% 結果+0.2%(前回+0.2%)
- 米CPI前年比:予想+2.6% 結果+2.5%(前回+2.9%)
- 米CPIコア・前月比:予想+0.2% 結果+0.3%(前回+0.2%)
- 米CPIコア・前年比:予想+3.2% 結果+3.2% (前回+3.2%)
- 米CPIスーパーコア(前月比):結果0.327%(前回0.205%)
- 米CPIスーパーコア(前年比):結果4.453%(前回4.468%)
- ドル円は142.532円まで上昇
⑦(木)円高
- 田村日銀審議委員
- 中立金利は最低でも1%程度
- 具体的な数字を発言
- ドル円は一時142.265円まで下落
⑧(木)欧州通貨高
- ECB政策金利
- 結果:0.25%利下げ
- 市場予想通りの結果
- ECB見通し「GDPは下方修正」で「コアインフレは上方修正」
- ドル安の日だったのでドルストが上昇
⑨(木)ドル安
- 経済指標
- 新規失業保険申請件数:予想23.0万件 結果23.0万件(前回22.7万件→22.8万件)
- PPI前月比:予想+0.1% 結果+0.2%(前回+0.1%→±0.0%)
- PPI前年比:予想+1.8% 結果+1.7%(前回+2.2%→+2.1%)
- PPIコア・前月比:予想+0.2% 結果+0.3%(前回±0.0%→-0.2%)
- PPIコア・前年比:予想+2.5% 結果+2.4% (前回+2.4%→+2.3%)
- モノの価格が落ちてサービス価格が上昇
⑩(金)ドル安
- ニック記者の記事
- 25bp利下げ、50bp利下げを迷っている
- FRBが迷っている状態
- CPIの結果で25bpと思っていた参加者が50bpの可能性も見てきた
- 今年最安値を更新
⑪(金)ドル高
- 経済指標
- ミシガン大学消費者信頼感指数:予想68.5 結果69.0(前回67.9)
- 1年先インフレ期待:予想+2.8% 結果+2.7%(前回+2.8%)
- 5年先インフレ期待:予想+3.0% 結果+3.1%(前回+3.0%)
週前半は日経平均株価の動きや日銀関係者の発言により振らされる動きとなり、米CPI以降は経済指標に振らされる動きが入りボラティリティが拡大します。
(ドル円)140.698円と年初来安値を更新しましたが、一服感もあり底堅く推移しておりました。
しかし金曜日の「ニック記者の記事」の影響により、140.273円付近まで下落することになりました。
ドル円の値幅は、3.5円(350pips)の値幅となり、週末は140円台後半で引けています。
今回のメイントピックスである「米CPI(消費者物価指数)&ニック記者の記事」についてまとめます。
米CPI(消費者物価指数)
【米CPI(消費者物価指数)】
- 前月比:予想+0.2% 結果+0.2%(前回+0.2%)
- 前年比:予想+2.6% 結果+2.5%(前回+2.9%)
- コア・前月比:予想+0.2% 結果+0.3%(前回+0.2%)
- コア・前年比:予想+3.2% 結果+3.2% (前回+3.2%)
- スーパーコア(前月比):結果0.327%(前回0.205%)
- スーパーコア(前年比):結果4.453%(前回4.468%)
米CPI、コア指数が予想外に伸び加速-大幅利下げの可能性低下
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-09-11/SJNEVZDWLU6800
総合指数は、かなり低下しています。
この要因は原油安による下落となりますが、コアの前月比は上昇している状態。
そして注目度が高い住居費を除いた「スーパーコア」は、前月比2ヶ月連続加速していることからインフレが上昇しているとマーケットが判断し、ドル買い方面に動いたということになります。
米CPI|内訳
(赤枠)エネルギーセクターは落ち込んでいる状況です。
(青枠)コアの中でも重要な「家賃(Shelter)」は、むしろ上がっている状態ということで、コアの前月比が上昇した要因へと繋がります。
この影響で今週18日FOMCにて「0.25%利下げか?0.5%利下げか?」という論争では、
- 「0.25%利下げ」に軍配が上がる
- 「0.5%利下げ」観測は後退
ドル円は一時142.532円まで上昇することになったという事になります。
ではCPI発表直後と現在のFedWatchの動きを見てみましょう。
FedWatch
<発表直後>
<現在>
発表直後の結果を見ている限り、ほぼ0.25%の利下げで間違いなさそうでしたが、現在の状況が変化してきています。
現在は「25bp利下げ・50bp利下げ」が50%づつとなり、半分に割れている状態です。
上記のように変化した要因は以下の記事の影響となります。
ニック記者の記事内容
<FRBの利下げジレンマ「大きく始めるか小さく始めるか」>
https://jp.wsj.com/articles/the-feds-rate-cut-dilemma-start-big-or-small-eeebb539
ニックというFedウォッチャーが書いている記事になりますが、50bp利下げの可能性が残っているとして記載されています。
ニック記者が注目されている理由は、これまでのFRBの動きを当てているからになります。
(FRBメンバーより情報がリークされているかは不明)
記憶に新しいのは2022年FOMCについて、「年末にかけて利上げペースを鈍化させる議論も行われる」と発信し、見事数字を当てたことで一躍有名になりました。
現在はブラックアウト期間(FRBメンバーが金融政策について語れない時期)の為、その代わりではないですがニック記者が何か重要な発言をするかもしれないということで、世界中からXやWSJの記事が注目されています。
ニック記者のX(旧Twitter)
まとめ
(対ドルにて)
2024/9/9~週は、米重要指標である『CPI・PPI』がありましたが日本円以外では目立った動きはありませんでした。
今週の米・日・英の中銀による発表に注目が集まります。
週末に報道されたニック記者の内容により、ドル円は年初来最安値を更新しており、先週同様に結果的に米利下げ割合が50:50で割れている状況です。
(対日本円)
前週同様に全主要通貨が均等に売られており、今週の日銀(BOJ)に注目です。
2024年9月2日~9月6日
①(月)ドル高
- 日経225上昇
- ドル円は一時147円突破
- レーバーデーの祝日(米国)
②(月)欧州通貨高
- 経済指標
- 仏製造業PMI【改定値】:予想42.1 結果43.9(前回42.1)
- 独製造業PMI【改定値】】:予想42.1 結果42.4(前回42.1)
- 欧製造業PMI【改定値】】:予想45.6 結果45.8(前回45.6)
- 英製造業PMI【改定値】】:予想52.5 結果52.5(前回52.5)
- 改定値が強い数字となった
③(火)円高
- 植田日銀総裁が諮問会議に資料提出
- 「経済・物価見通し実現なら利上げ継続」
- 「国会の閉会中審査」の内容と一緒
- ドル円は一時145.616円まで下落
④(火)ドル安
- 経済指標
- 米製造業PMI【改定値】:予想48.1 結果47.9(前回48.0)
- ISM製造業景況指数:予想47.5 結果47.2(前回46.8)
- ドル円は一時145.100円付近まで下落
⑤(火)米株安
- 「NVIDIA」反トラスト法(独占禁止)巡る報道
- 一時-9.53%下落
- 時価総額「2789億ドル(40兆円)」が消失
- ナスダック(-3.26%)&SP500(-2.12%)下落
⑥(水)ドル安
- 経済指標
- JOLTS:予想8100千件 結果7673千件(前回8184千件→7910千件)
- 結果は求人数が減少し、前月分も下方修正
- ドル円は78pipsの下落
- 一瞬「順イールド」に戻る
⑦(水)カナダドル安
- BOC政策金利&声明発表
- 結果:25bp利下げ(425bp)
- インフレ率が再燃することのリスク
- インフレが急激に落ち込む
- 上記両面で考えている
- マーケットは年内会合すべて利下げ予想
⑧(木)ドル安→ドル高
- 経済指標
- ADP雇用統計:予想14.7万人 結果9.9万人(前回12.2万人→11.1万人)
- 米新規失業保険申請件数:予想— 結果22.7万件(前回23.1万件→23.2万件)
- 第2四半期非農業部門労働生産性【改定値】:予想2.4%結果2.5%(前回2.3%)
- 単位労働費用【改定値】:予想0.9%結果0.4%(前回0.9%)
- 米非製造業PMI【改定値】:予想55.2結果55.7(前回55.2)
- ADPは悪化していたものの、他の結果が強かったので「往って来い相場」
⑨(木)ドル高→ドル安
- 経済指標
- ISM非製造業景況指数:予想50.9 結果51.5(前回51.4)
- ドル円は1円(100pips)以上の上昇
- (雇用)の落ち込みなどが確認できると始値あたりの143.300円付近まで下落
- 「雇用統計」待ちの相場
⑩(金)ドル高→ドル安
- 経済指標
- 雇用統計(雇用者数):予想16.5万人 結果14.2万人(前回11.4万人→8.9万人)
- 失業率:予想4.2% 結果4.2%(前回4.3%)
- 平均時給(前月比):予想0.3% 結果0.4%(前回0.2%)
- 平均時給(前年比):予想3.7% 結果3.8%(前回3.6%)
- 瞬間ドル高になるがドル安へ
- 雇用者数にフォーカスか?!
⑪(金)ドル安
- 要人発言(ウォラーFRB理事)
- 大幅利下げの可能性に対して「オープンマインド」
- リスクバランスは2大責務の雇用側にシフトしている
- これに応じた政策調整が必要
- 発言内容はハト派
- 25bp?50bp?どちらの利下げか焦点
米国1週目の重要経済指標が発表され、乱高下することになります。
経済指標の結果は良かったり悪かったりとマチマチでしたが、FRBが掲げる「雇用の最大化」に対して目線が変わってきている事が露骨に出た1週間でした。
(ドル円)月曜日の買い戻し以降大きく崩れ、5.4円(543pips)の値幅となり142円台前半を推移することになります。
今回のメイントピックスである1週間の「米経済指標」についてまとめます。
米経済指標
- ISM製造業景況指数
- JOLTS求人
- ADP雇用統計
- ISM非製造業景況指数
- 米雇用統計
上記は1週目に必ず発表される米国の経済指標となります。
以前の週報でも掲載している通り、FRBは前回のFOMC以降、「インフレ」だけではなく「雇用」にも注目をしています。(8/12〜16の週報参考)
そして来週に控えたFOMCを前に、マーケットは「リスクバランス2大責務(インフレ・雇用)」の雇用に注意をしている動き方でした。
各指標の「雇用」項目が悪化していると、メインの結果が良くて一時的にドル高で反応するも、結果的にドル安になる傾向が見られたり、その逆パターンの傾向もありました。
(現在)ドル安の流れは継続、クロス円も重い展開が続きそうな印象です。
それでは各指標結果とドル円の動きについて掲載します。
▼ISM製造業景況指数
- ISM製造業景況指数:予想47.5 結果47.2(前回46.8)
- (赤枠)メインの数字は悪化
- (青枠)雇用の数字は改善
- ドル円下落(60pips)→ドル円上昇(71pips)
▼JOLTS求人
- JOLTS求人:予想8100千件 結果7673千件(前回8184千件→7910千件)
- 求人数が大幅に減少
- ドル円下落(78pips)
▼ADP雇用統計
- ADP雇用統計:予想14.7万人 結果9.9万人(前回12.2万人→11.1万人)
- 今月分も悪化し、前月分も下方修正
- ドル円下落(71pips)
▼ISM非製造業景況指数
- ISM非製造業景況指数:予想50.9結果51.5(前回51.4)
- (青枠)メインは強い数字
- (赤枠)雇用(Employment)は悪化
- ドル円上昇(100pips)→ドル円下落(78pips)
▼米雇用統計
- 雇用統計(雇用者数):予想16.5万人 結果14.2万人(前回11.4万人→8.9万人)
- 失業率:予想4.2% 結果4.2%(前回4.3%)
- 平均時給(前月比):予想0.3% 結果0.4%(前回0.2%)
- 平均時給(前年比):予想3.7% 結果3.8%(前回3.6%)
- 失業率、平均時給の結果はドル高要因
- 雇用者数・・・予想を下回り、前月分は下方修正
- ドル円上昇(80pips)→ドル円下落(200pips)
まとめ
(対ドルにて)2024/9/2~週は、前週のドルの買い戻し(調整)から一転、日本円・スイスフランに対して特に弱い1週間となりました。
第1週目は米国の重要指標が並び、その結果に振らされる形となりました。
2024/9/18にFOMCを控え、マーケットの利下げ予想は【25bpまたは50bp】にいまだに割れている現状で迷っている状況がうかがえます。
また上位より日本円(+2.66%)・スイスフラン(+0.80%)となり、最下位はAUD(▲1.39%)となり、低金利通貨が買われ資産国通貨が売られるリスクオフの局面となりました。
対日本円では全主要通貨(特に資産国通貨)が売られ、主要国の株価も下落となりリスクオフに振れた1週間だったと考える事ができます。