本記事では、2025年1月の為替市況について解説いたします。
テクニカル分析も重要ですが、FXは外貨と外貨の両替による取引で損益が発生します。
そのため週間レポートは、通貨の売買を促すきっかけとなるファンダメンタルズ(経済/金融の流れ)中心の見解となります。
各週の相場状況・重要トピックスについて解説します。
2025年1月13日~2025年1月17日
①(月)ドル高
- NY連銀インフレ期待
- 1年先インフレ期待:前回3% 今回3%
- 3年先インフレ期待:前回2.6% 今回3%
- 5年先インフレ期待:前回2.9% 今回2.7%
- 期待インフレが上昇している状態
- トランプ次期政権による関税導入の可能性が懸念材料
②(火)欧州通貨高
- トランプ次期大統領の経済チームの案
- 月に2~5%づつ引き上げて段階的に関税を引き上げる案
- 初期段階の案はトランプ氏にはまだ提示されていない
- 関税緩和報道にてドル安
③(火)ドル安
- 経済指標
- 米PPI前月比:予想+0.3% 結果+0.2%(前回+0.4%)
- 米PPI前年比:予想+3.4% 結果+3.3%(前回+3.0%)
- 米PPI前月比・コア:予想+0.3% 結果±0.0%(前回+0.2%)
- 米PPI前年比・コア:予想+3.8% 結果+3.5%(前回+3.4%→+3.5%)
- 予想を下回る弱い数字
- 前月に比べると緩やかに上昇しているペース
④(水)円高
- 要人発言(植田氏・加藤氏)
- 来週の日銀会合で利上げなど行うか判断
- 利上げする可能性が高くなってきた
- 70%「利上げ」に対して織り込んでいる状態
- ドル円は156.710円まで下落
⑤(水)ドル安
- 経済指標
- 米CPI前月比:予想+0.3% 結果+0.4%(前回+0.3%)
- 米CPI前年比:予想+2.9% 結果+2.9%(前回+2.7%)
- 米CPI前月比・コア:予想+0.2% 結果+0.2%(前回+0.3%)
- 米CPI前年比・コア:予想+3.3% 結果+3.2%(前回+3.3%)
- 米CPI前月比・スーパーコア:結果+0.2%(前回+0.3%)
- 米CPI前年比・スーパーコア:結果+4.1%(前回+4.3%)
- 米長期金利は16bpの大幅な下落
- ドル円は155.950円まで下落
⑥(木)欧州通貨安
- 経済不安&財政不安
- 欧州の経済不安
- 英国の財政不安
- ECBの大幅な利下げ観測
- 売られやすい傾向が続いている
⑦(木)ドル安
- 経済指標&要人発言
- 新規失業保険申請件数:予想21.0万件 結果21.7万件
- 小売売上高・前月比:予想+0.6% 結果+0.4%
- 小売売上高・前月比コア:予想+0.4% 結果+0.4%
- ウォラー氏:直近のCPIのデータが続けば、年内3〜4回の利下げは可能
⑧(金)ポンド安
- 経済指標
- 英小売売上高(前月比):予想0.3% 結果-0.3%(前回0.2%→0.1%)
- 英小売売上高(前年比):予想4.5% 結果3.6%(前回0.5%→0.0%)
- 英小売売上高(前月比・コア):予想0.2% 結果-0.6%(前回0.3%→0.1%)
- 英小売売上高(前年比・コア):予想3.6% 結果2.9%(前回0.1%→-0.5%)
- 結果が弱く下落
⑨(金)ドル高
- トランプ氏、習主席の電話会談
- トランプ:中国と米国の両方にとって非常に良い会談
- 中国側:両氏はウクライナや中東の情勢についても協議
- リスクオンで株の買い戻しが入る
- ドルは堅調に
日銀の利上げ観測報道が入り、米CPIの結果を受け、ドル円・クロス円は大きく下落することになりました。
ドル円の値幅は約3.2円(320pips)となり、155円台まで下落することになりました。
メイントピックスである、
- 「日銀の利上げ観測報道」
- 「米CPI(消費者物価指数)」
についてまとめていきます。
日銀の利上げ観測報道
植田日銀総裁、来週会合で利上げ判断と明言-市場観測強まり円高進行
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-01-15/SQ3UU7T0G1KW00
【植田日銀総裁】
- 金融政策、経済・物価の情勢の改善が続けば政策金利を引き上げ緩和度合いを調整
- 来週の会合で利上げなど行うか判断
植田日銀総裁は、来週の金融政策決定会合で「利上げを行うかどうか議論し、判断したい」と話しました。
2025年春闘に向けた賃上げの動向は、年明けの企業経営者の発言や日銀の各支店からの報告を基に「前向きな話が多かった」と評価しました。
動向としては今年も「経済、物価情勢」の改善が続いていくのであれば、それに応じて政策金利を引き上げるとのこと。
内容は14日の氷見野日銀副総裁が話をしていた事と似ている部分がありましたが、副総裁ではなく現総裁がそれを言うなら、ほぼ来週は「利上げ」をしていくことになると、マーケットは判断した様子です。
そして植田氏は、2024年8月の急落に繋がった発言や行動が脳裏にありますので市場との対話が大事だと考えているはずです。
そんな植田氏が「利上げに対して言及」するというなら、おそらく利上げではないか?と言った内容になっています。
そして17日の金曜日には以下のようなリーク記事(有料)も日経新聞から報道されています。
リーク記事
<日銀政策委員、過半が利上げ支持 市場見極め最終判断>
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB162Q10W5A110C2000000/?n_cid=SNSTW001&n_tw=1737104775
市場は水曜日時点で、70~80%程度の「利上げ」を織り込んでいて、17日の段階では99%まで織り込みましたので、日銀会合ではほぼ利上げすると考えて良いでしょう。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-01-17/SQ7KKCT1UM0W00
利上げすることが決まれば政策金利は0.5%になるので、織り込みが完了していなければドル円・クロス円はもう一段円高方向に走る可能性があります。
米CPI(消費者物価指数)
米CPI、コアは前月比で6カ月ぶり鈍化-3月利下げを再び意識
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-01-15/SQ4TMHT0AFB400
- 前月比:予想+0.3% 結果+0.4%(前回+0.3%)
- 前年比:予想+2.9% 結果+2.9%(前回+2.7%)
- 前月比・コア:予想+0.2% 結果+0.2%(前回+0.3%)
- 前年比・コア:予想+3.3% 結果+3.2%(前回+3.3%)
- 前月比・スーパーコア:結果+0.2%(前回+0.3%)
- 前年比・スーパーコア:結果+4.1%(前回+4.3%)
上記の結果を受け、米長期金利(米10年債利回り)16bpの大幅な下落となりました。
この金利の下落により、ドル円も155.950円まで下落することになりました。
おそらくCPIの影響だけではないと思いますが(ポジションの偏りがあった)、結果的には下落することになります。
CPIの内容は、総合が上昇していることに対して、コアが下落していることがサプライズとなります。
コアは前月比で6カ月ぶりに鈍化と言うことになります。
CPIの推移
FRBが注目しているスーパーコア(住居費を除くコアサービス)が鈍化傾向にあるので、「インフレは高止まりしているわけではなかったか?」という市場の思惑も入り、FRBの年内の動きは「利下げよりむしろ利上げ?」という風に市場では捉えられていたものが覆された状況と言うわけです。
スーパーコアの推移
CPIコアの内訳
(赤枠部分)宿泊費の低下や医療サービス費の伸び鈍化、家賃の比較的低い伸びが、CPIを抑制する要因となりました。
今回がきっかけで、ドル円・クロス円の下落が始まり、3.2円の下落に繋がりました。
2025/1/13~週は、基本はドル売り・主要通貨に対して円買いが強い週となりました。
2025年1月6日~2025年1月10日
①(月)欧州通貨高
- 経済指標
- 仏非製造業PMI:予想48.2 結果49.3(前回48.2)
- 独非製造業PMI:予想51.0 結果51.2(前回51.0)
- 欧非製造業PMI:予想51.4 結果51.6(前回51.4)
- 英非製造業PMI:予想51.4 結果51.1(前回51.4)
- 独消費者物価指数:前月比:予想+0.3% 結果+0.4%(前回-0.2%)
- 独消費者物価指数:前年比:予想+2.4% 結果+2.6%(前回+2.2%)
- ユーロ高材料
②(月)ドル安→ドル高
- WPの誤報
- 重要な輸入品のみを対象とする関税計画を検討(WP)
- ワシントン・ポスト紙の記事は正確ではない(トランプ氏)
- 関税政策は縮小しない(トランプ氏)
- ドル円が1.7円の乱高下
③(火)円高
- 牽制発言
- 加藤財務相:足元では一方的、急激な動きみられると認識
- 加藤財務相:行き過ぎた動きに対しては適切に対応
- 欧州通貨はショートカバーが続いている状態
④(火)ドル高
- 経済指標
- ISM非製造業景況指数:予想53.3 結果54.1(前回52.1)
- JOLTS求人:予想7700千件 結果8098千件
- 強い経済指標
- ドル円は158.410円まで上昇
⑤(水)欧州通貨安
- 経済指標
- 独小売売上高(前月比):予想+0.5% 結果-0.6%
- 独小売売上高(前年比):予想+2.5% 結果+2.3%
- ドイツ経済が弱い状況
⑥(水)ドル高
- トランプ氏(CNN報道)
- 新たな関税プログラムを検討
- 国家経済非常事態宣言を検討
- 関税が増えると必然的にインフレが上がる
- 米長期金利が上昇
- 158.546円まで上昇
⑦(水)ドル高→ドル安
- 経済指標&要人発言
- ADP雇用統計:予想+14.0万人 結果+12.2万人(ドル安)
- 新規失業保険申請件数:予想21.8万件 結果20.1万件(ドル高)
- ウォラーFRB理事:さらなる利下げが適切になるだろう(ハト派意見)
⑧(木)ポンド安
- 労働党政権の借り入れコストの影響
- 財政赤字抑制に苦戦するとの懸念
- 英30年債は売られて金利は5.44%にまで上昇
- 債券と通貨安
⑨(木)ドル高
- インフレ意識
- FRBは雇用からインフレに再度目を向け出す
- 要人発言内でもタカ派発言が増える
- 利下げには段階的かつ忍耐強いアプローチが必要
- 利下げは段階的かつデータに基づいて行うべき
- 米長期金利は4.6%でドル円158円台をキープ
⑩(金)円高
- 日銀の利上げ観測(ブルームバーグ)
- 日銀が物価見通しを上方修正か?
- 生鮮とエネルギーを除いたコアコアCPIの見通しを上方修正
- コメなど食料品の上昇や円安、賃金コストの価格への転換などが理由
- 経済物価情勢は日銀の見通しに沿っている
- 春闘の動向や市場動向を踏まえ慎重に行う可能性
- ドル円157.747円まで下落
⑪(金)ドル高
- 雇用統計
- 雇用者数:予想+16.4万人 結果+25.6万人(前回+22.7万人→+21.2万人)
- 失業率:予想4.2% 結果4.1%(前回4.2%)
- 平均時給(前月比):予想+0.3% 結果+0.4%(前回+0.4%)
- 平均時給(前年比):予想+3.9%結果+4.0%(前回+4.0%)
- 全てドル高要因
⑫(金)ドル高
- ミシガン大学消費者信頼感指数
- 予想73.9 結果73.2(前回74.0)
- 1年先期待インフレ:予想2.8%結果3.3%(前回2.8%)
- 5年先期待インフレ:予想3.0% 結果3.3%(前回3.0%)
- 期待インフレが上昇
- 強かったが、あまり動かず
年末年始が経過し、本格的に2025年の為替相場がスタートする週になりました。
1週目ということで米国の重要な経済指標の発表があり、相場はやや乱高下することになりました。
ドル円の値幅は約2.6(260pips)となり、158円台をしっかり乗せる動きを見せて直近高値を上抜けることになりました。
今回のメイントピックスである、
- トランプ砲
- 現在のFRBの考え
- 米・雇用統計
についてまとめていきます。
トランプ砲
<ワシントン・ポスト>
トランプ次期大統領、重要な輸入品への一律関税導入を検討
https://www.washingtonpost.com/business/2025/01/06/trump-tariff-economy-trade/
月曜日からワシントンポストの記事にて、トランプ氏の側近が「普遍的」関税計画を準備中 ― 重要な変更点が1つドナルド・トランプ次期大統領の側近は、すべての国に適用されるが重要な輸入品のみを対象とする関税計画を検討していると、事情に詳しい3人が語った。
これは『2024年大統領選キャンペーン中のトランプ氏の計画からの重要な転換点となる』という記事で、規制が一部緩和したことが好感されてドル売りになった可能性もあります。
この時点でドル円は156.230円まで下落していましたが、ショートカバーが入り、そのままトランプ氏からの「上記報道の否定」が入ります。
【トランプ次期大統領】
トランプ氏、関税政策の後退ないと言明-範囲限定を巡る報道を否定
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-01-06/SPNZLMT1UM0W00
この否定が入ることで、大きくドルの買い戻しが入ることになりました。
年初からこのような「関税に対する発言」の動きが入ってきているので、2025年1月20日に米大統領に就任し【トランプ2.0】が本格的に動く可能性も考えられます。
そしてこのようなトランプ氏の発言や動きによってFRBの考えに変化が生じてきています。
現在のFRBの考え
FRBは2024年より「インフレ」が一旦落ち着きを取り戻してきたので、「雇用」に意識をしだすような発言が多くありました。
しかし米大統領選挙にてトランプ氏が勝利することで、経済政策の観点から「インフレが再燃するのでは?」という流れとなり、先月のFOMCでは「なんとか利下げを実施した」というような表現だったことから、利下げペースの鈍化とマーケットは捉えた様子でした。
今週も数人の要人が発言をしましたが、ウォラー氏以外はほとんどが「タカ派」な印象であり、
- 「利下げには段階的かつ忍耐強いアプローチが必要」
- 「利下げは段階的かつデータに基づいて行うべき」
など、インフレに対して警戒している内容だったので、FRBの内部では「雇用→インフレ」に再度シフトしてきているのかな?という印象でした。
雇用統計
【雇用統計】
- 雇用者数:予想+20.0万人 結果+22.7万人(前回+1.2万人→+3.6万人)
- 失業率:予想4.2% 結果4.2%(前回4.1%)
- 平均時給(前月比):予想+0.3% 結果+0.4%(前回+0.4%)
- 平均時給(前年比):予想+3.9%結果+4.0%(前回+4.0%)
- 雇用者数:ドル高
- 失業率:ドル高
- 平均時給(前月比):ドル高
- 平均時給(前年比):ドル高
米雇用者数は予想上回る、失業率低下-利下げ休止の論拠裏付け
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-01-10/SPVKACT0G1KW00?srnd=cojp-v2
雇用統計は予想を超える強い数字となりました。
申し分ない結果となり、長期金利が4.75%まで急上昇=ドル円は158.878円まで上昇することになりました。
そして米株価・GOLD・BTCなどは、金利上昇の影響を受け下落することになります。
FedWatch
現在のマーケットはFRBと同様「インフレ」に注視し始めているため、利下げペースがさらに鈍化する流れになりそうな結果でした。
3月FOMCの政策金利に対するマーケット予想は、
- 金利据え置き:56.2%→72.0%まで上昇
- 25bp利下げ:41.3%→27.3%まで減少
まとめ
2025/1/6~週は、基本的にはドル買い・週後半はリスクオフによる円買いが強い週となりました。
英国のスターマー政権の財政拡張懸念から、株・債券・為替のトリプル安はかろうじて免れていますが、英国債を手放す動きから『金利上昇=為替市場ではポンド売り』が進んでいます。
米国の12月雇用統計は労働市場の堅調さを再確認、追加利下げに懐疑的な見方が一段と強まり、『金利上昇=為替市場では初動はドル買い』の反応でした。
しかし金利の上昇から株価の割高感が台頭、リスク回避の動きから米株3指数が値を下げ、その余波から為替市場ではクロス円が売られました。
USDJPYは2024年夏の政府・日銀の円買い介入後の戻り高値を更新する158.88まで伸びましたが、その後クロス円の売りから反落となっています。
今週の変数は、
- 1/14:米12月PPI(生産者物価指数)
- 1/15:米12月CPI
- 1/16:米12月小売売上高
来週(1/20)はトランプ大統領の就任が予定されていますので、インフレの再加速が想定できます。