
本記事では、2025年4月の為替市況について解説いたします。
テクニカル分析も重要ですが、FXは外貨と外貨の両替による取引で損益が発生します。
そのため週間レポートは、通貨の売買を促すきっかけとなるファンダメンタルズ(経済/金融の流れ)中心の見解となります。
各週の相場状況・重要トピックスについて解説します。
2025年3月31日~4月4日
*評価損に関する状況
①(月)ドル安
- 前週金曜日の流れ
- スタグフレーション懸念
- 株価・ドルが急落
②(月)ドル高
- テクニカル的な反発
- 売られすぎの一旦の調整
- トランプ関税発言待ち
- トランプ関税が緩和されるかも?
- ドル高・株高(リスクオフの巻き戻し)
③(火)豪ドル高
- RBA政策金利
- 結果:据え置き(410bp)
- 豪ドルは据え置きで瞬間的に上昇
- 声明文の内容がハト派な印象
- インフレ圧力が依然としてある
- 本日は利下げについて明確に議論しなかった
- 豪ドルはその後上昇する流れ
④(火)ドル安
- 経済指標
- ISM製造業景況指数:予想49.5 結果49.0(前回50.3)
- JOLTS求人:予想7616千件 結果7568千件
- ISMに関しては3ヶ月ぶりの50を割り込んだ
- ドル安・株安
⑤(水)ドル高
- 経済指標
- ADP雇用統計:予想+12.0万人 結果+15.5万人
- 米国株の買い戻しが入る
- ドル円150円台に乗せる
⑥(水)全通貨・株価リスクオフ
- 相互関税の発表
- 「世界一律10%の関税」で一旦上昇
- 国別の関税が発表され一気にリスクオフの流れ
- 10%の関税は絶対にかける一律の関税+国別で分けている
- 日本は24%の関税
- ドル・株価・世界的にリスクオフ相場になる
⑦(木)全通貨・株価リスクオフ
- 相互関税の影響
- 前日の続きで大きくリスクオフ
- ダウが-3.98%、ナスダックが-5.97%、S&Pが-4.84%
- 時価総額290兆円近く消失している状況
⑧(木)ドル安
- 経済指標
- ISM非製造業景況指数:予想53.2結果50.8(前回53.5)
- ドル円は145.172円まで下落
⑨(金)世界的な株安
- 米相互関税からの中国、カナダの報復関税による動き
- カナダ、アメリカ製の完成車に25%の関税を課す
- 中国、4月10日から米製品に34%関税
- 中国、レアアース輸出規制
- 貿易戦争による経済的リスク
- ダウ5.50%、ナスダック5.82%、S&P5.97%
- ダウに関しては史上3番目の大きさの1日の下げ幅
- VIX指数45到達
⑩(金)ドル高
- 経済指標
- 非農業部門雇用者数:予想+13.5万人 結果22.8万人 (前回+15.1万人)
- 失業率:予想4.1% 結果4.2% (前回4.1%)
- 平均時給(前月比):予想+0.3% 結果0.3% (前回+0.3%)
- 平均時給(前年比):予想+3.9% 結果3.8% (前回+4.0%)
- 若干マチマチな動きだったが、ドルの買い戻しが入る
- 株価の下落と連動していない状態
⑪(金)ドル高
- パウエルFRB議長発言
- 関税は予想より大規模で、インフレと経済成長に深刻な影響を与える可能性
- 関税によるインフレへの影響、より持続的になる可能性
- 政策は好位置なので様子見できる
- スタグフレーション優先にするべきか?(据え置き)
- それとも株価の下落を優先にするべきか?(緊急利下げ)
- 現在はスタグフレーションよりの考えか?
トランプ大統領の相互関税の発表により、大きなリスクオフ相場となりました。
米国株が急落により、木曜日に時価総額290兆円近く消失する状況であり、金曜日はダウ平均が史上3番目の下げ幅(日間ベース)を記録しました。
ドル円は値幅約6.00円(600pips)となり、かなりの大相場となりました。
今回のメイントピックスである、「相互関税の発表」についてまとめます。
相互関税の発表
*相互関税のイメージ
(当日の発表まで)直近の相場では、この相互関税が意識された相場となっていました。
これだけ注目されている要因としては、やはり全世界を対象に高関税になってしまうと、世界のモノの流れが大きく変化するからです。
「輸入品が値上がり・サプライチェーン混乱・世界経済が滞り」、「世界貿易戦争」が勃発し景気後退リスクにつながる可能性が出てきます。
日本もこの関税リストにあげられている状況でした。
木曜日の早朝
トランプ政権が世界一律10%の相互関税-日本24%、中国は計50%強に
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-04-02/SU3XO0T0AFB400?srnd=cojp-v2
【トランプ米大統領】
- 相互関税に関する大統領令に署名する
- 米国の相互関税計画を発表
- 日本の関税率は24%、中国は34%、EUは20%
- 相互関税は3日に発動開始
- シンガポールの関税率は10%、南アフリカは30%、インドは26%
- 関税は米国の経済成長に寄与する
【米ホワイトハウス】
- 最低10%の関税率は4月5日から適用される
- より高い関税率は9日から適用される
当初は「世界一律10%の関税に」という発表で、一時リスクオンとなりました。
当初25%と言われていただけに10%だったということもあり、安堵感にて上昇した流れになります。
しかし、国別の関税が発表され一気にリスクオフの流れとなりました。
要するに10%の関税は必須の一律関税であり、さらにプラスして国別で分けているという内容でした。
その内容が以下になります。
対象50カ国|一部省略
上記の関税を4月上旬に発動する見通しとなっておりますし、すでに公表されている25%の自動車関税もあるので、日本にとってはダメージは大きいと言えます。
この影響で朝から日経平均株価以外でも世界中の株価は急落しており、ドル円もリスクオフの円高となって下落している最中です。
ここから世界中がどのような対応をしてくるかによって「貿易戦争」が勃発する可能性も出てきます。
要するに「報復関税」という関税のかけ合い合戦ということですね。
これはトランプ政権1.0の時に中国と「貿易摩擦」をしたことで、どちらの国の株価も急落した内容になります。
そういったことを避ける為か、米財務長官からは以下の発言がされております。
ベッセント氏、報復についてけん制-報復なければ現在の数字が上限
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-04-03/SU4EIET0AFB400
【ベッセント米財務長官】
- 各国はパニックや報復を控えるように
- 現在示されている数字は関税率の上限
報復がなければ現在の数字が上限となり、まだ交渉の余地を残しているということです。
木曜早朝までの動きでしたが、木曜日の東京市場以降は、急激にリスクオフの動きとなりました。
木曜日
「トランプ(関税)ショック1日目」となります。
木曜日はなんでも売れ相場(リスクオフ)となり、リスク回避のため株から債券へ資金がシフトし、原油やゴールドも乱高下(利確売りが入るなど)している状態となりました。
ドル円は4.0円(410pips)の下落の大相場となり、ユーロドルに関しても1日で339pipsの上昇相場となり、稀に見ない相場となりました。
そして特に影響を受けているのが株式相場になります。
米国株が急落して、時価総額290兆円近く消失している状況。(日米欧で500兆円の損失)
米国株急落、時価総額290兆円近く消失-「誰も逃れられない」との声
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-04-03/SU5ABWDWX2PT00
安値引けになっていますが木曜日は、
- ダウが-3.98%
- ナスダックが-5.97%
- S&Pが-4.84%
大幅な下落相場が続き、VIX指数が30%ラインを推移するショック級の相場状況となりました。
金曜日
「トランプ(関税)ショック2日目」となります。
米株式市場では、
- ダウ-5.50%
- S&P500-5.97%
- ナスダック-5.82%
と急落が続きました。
木曜日と金曜日の下落は、2020年3月以来の最大を記録し、時価総額にして約5兆ドル(約728兆円)が吹き飛んだ相場状況となりました。
要因は、他国による「報復関税」がきっかけとなります。
カナダ
カナダ首相、米関税に限定的な対抗措置 トランプ氏の行動「悲劇」
https://jp.reuters.com/markets/commodities/H6Q3VLMTKBN7HPAHTO3YZCXFPU-2025-04-03/
カナダの報復関税が以下になります。
- 米国から輸入され、米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)の基準に適合しない全ての車両に対し25%の関税を課す
中国
中国が報復措置、全ての米国製品に34%の追加関税 10日発動
https://jp.reuters.com/markets/japan/funds/PENBL5V4DBI57LTCGJKOWFXNCM-2025-04-04/
中国の報復関税が以下になります。
- 10日から全ての米国製品に34%の追加関税
- レアアースのうち中・重希土類について、米国への輸出を4日から規制
- 防衛関連産業を中心とする複数の米国企業にも制限
上記がきっかけとなり、「貿易戦争の経済的リスク」が発生し、米株価が急落することになります。
そしてVIX(恐怖)指数は、45.31を記録し、2020年4月以来の高水準となり、市場が困惑している状況です。
トランプ氏は、
- 「中国は対応を誤った、パニックに陥っている」
- 「自分の関税へのスタンスは変わらない」
など、再報復関税の姿勢は変わっていない状況です。
パウエルFRB議長の発言もありましたが、以下になります。
パウエルFRB議長
パウエル議長、関税でインフレ長期化を警戒-様子見維持を示唆
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-04-04/SU79IIT0AFB400
【パウエルFRB議長】
- 関税は予想より大規模で、インフレと経済成長に深刻な影響を与える可能性
- 関税によるインフレへの影響、より持続的になる可能性
- 政策は好位置なので様子見できる
関税でインフレ長期化を警戒している状況で、政策金利は様子見を維持することを示唆しました。
株価があまりにも暴落すると、現在の政策金利ではさらに不況への追い討ちをかける結果になる可能性もあります。
この場合、「緊急利下げ」を行わざる負えない状況になることもあります。
Fedwatch
米国の利下げ回数は4回を見込んでいる状況です。(FOMC3月会合の金利見通しでは2回の想定)
現在はスタグフレーション(インフレ重視)寄りの考えで発言しておりますが、引き続きインフレに目を向けて「据え置き姿勢」をとるか、株価暴落(利下げ)に目を向けるのか?が注目ポイントです。
トランプ大統領目線では、以前から「政策金利が高過ぎる」発言をしておりましたので、後者の「株価暴落している状況なのだから、利下げをするべきだ!」と示唆しているとも解釈する事もできます。
引き続き、トランプ大統領の報復に対しての対応策・各国の報復関税の内容・FRBの立ち回りなどに注目です。
まとめ
2025/3/31~週は、米国が相互関税を正式に発表したことで、市場は急速なリスク回避の動きに見舞われました。(事前報道とは異なるサプライズ)
リスクオフ相場の動きとしては、相対的に金利の低い通貨であるCHFやJPYが買い戻されています。
通常はクロス円の売りが盤石ですが、EURやCAD(資源国通貨)が上昇していたりと、やや説明がつきにくい動きもありました。
週末(金曜日)に中国が報復関税を正式発表したこともあり、貿易を通じ密接な関係があり、中国経済の代理変数であるAUDやNZDといったオセアニア通貨の下げが大きくなっています。
また株式市場では、ダウは週間で3300ドル弱の下げ、ナスダックは弱気相場入りの目途とされる高値から20%以上下落しており、底が見通せない状況となっています。
今週も市場混乱の渦中であり上下に振れる展開を予想しますが、米国の相互関税は政権公約であり、相手国の大幅譲歩を引き出さない限りは調整や撤回の可能性はかなり低いでしょう。
下落し過ぎた反動は一時的に想定できますが、本格的は反騰にはならないと想定されます。
また米国のCPIなどインフレ率を測る重要指標が予定されていますが、関税をテーマに当分市場は動くと予想されます。
(このようなリスク回避の傾向が高まる市場では、ドル円・クロス円の売りが定石となります。)
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