
本記事では、2025年5月の為替市況について解説いたします。
テクニカル分析も重要ですが、FXは外貨と外貨の両替による取引で損益が発生します。
そのため週間レポートは、通貨の売買を促すきっかけとなるファンダメンタルズ(経済/金融の流れ)中心の見解となります。
各週の相場状況・重要トピックスについて解説します。
2025年5月5日~5月9日
①(月)アジア通貨高
- 台湾ドルが10%急騰
- 為替に対しての議論があったから?
- アジア通貨高になって円もその流れになるか?
- ドル円は143円台へ
②(月)ドル高
- 経済指標
- ISM非製造業景況指数:予想50.2 結果51.6 (前回50.8)
- 瞬間的に上昇するが、抑え込まれる
③(火)ユーロ安
- ドイツの首相がメルツ氏
- 1回目の投票では過半数を得られず
- 2回目の投票で630議席中325票を獲得
- 支持を得られなかったことがユーロ安に繋がる
④(火)ドル安
- 米10年債入札結果
- 最高落札利回り:4.342%(WI:4.354%)
- 応札倍率:2.60倍(前回:2.67倍)
- 金利下落でドル円は142円台に突入
⑤(水)ドル高
- 中国と貿易で閣僚級協議へ
- 中国との会談がスイスで行われることが決定
- 米中貿易摩擦が後退したことでリスクオン
- ドル円は143円台に急騰
⑥(水)ドル安→ドル高
- FOMC&パウエル氏の発言
- 結果:据え置き(450bp)
- 声明文はややハト派でドルが売られる
- パウエル氏の発言はややタカ派で買い戻し
- 高関税が続けば失業率上昇とインフレ上昇のリスク
- 早期利下げには慎重
⑦(木)ポンド高
- BOE政策金利
- 結果:利下げ(425bp)
- 世界的な貿易戦争が英経済の重し
- 5人が25bp引き下げ支持
- 2人は50bp引き下げ
- 2人が「据え置き」を支持
- 2人据え置きがいてることに市場は反応
⑧(木)ドル・ポンド高
- 日英貿易協定合意
- 鉄鋼・アルミの25%関税を撤廃
- 自動車関税 27.5%→10%(上限10万台)
- 10%の相互関税は継続…
- ドル・株が大幅に上昇してリスクオン相場になる
⑨(金)株横ばい
- 米中の貿易協議待ち
- 貿易協議を週末に控え動かない展開
- 10日にスイスにて
- トランプ氏は中国製品に対する関税率を80%が妥当
- マグニフィセント・セブンの株価がテスラ以外は好調
⑩(金)ドル安
- インド・パキスタン情勢
- 地政学リスク
- 軍事衝突激化
- 全面戦争に近づく恐れ
- リスクオフ
当該週は、米国の経済指標やトランプ関税の動向によりリスクオン相場となりました。
ドル円の値幅約3.8円(380pips)となり、一時146円台まで回帰する流れとなりました。
では今回のメイントピックスである、「FOMC」「日英貿易協定合意」についてまとめていきます。
FOMC
FOMCが金利維持、調整急がずとパウエル議長-関税リスク警告
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-05-07/SVWKPWDWLU6900?srnd=cojp-v2
【FOMC】
- 結果:据え置き(450bp)
マーケットの予想通り、「据え置き」となりました。
反応は無風で通過となります。
声明はトランプ関税により不確実性が高まっている状況、そして「失業率上昇とインフレ上昇のリスク」というスタグフレーション懸念も出ていたことにより、若干利下げ前向きともとれる内容でややハト派な印象でした。
この時点でドル円は徐々に下落する流れとなりますが、パウエル氏の発言が入りドルの買い戻しが入ります。
パウエル議長発言
トランプ大統領の相互関税の件に触れ、「予想を大幅に上回る」との発言でした。
ただ、「2019年の時のように予防的な利下げができないので、利下げは急がない」と発言しておりました。
この高関税が続けば声明文でもある通り、「失業率上昇とインフレ上昇のリスク」があると指摘。
この上、経済鈍化する可能性も高いとしています。
ただし現時点で政策の対応は不要で、関税次第で臨機応変で対応していく流れと主張。
また景気に配慮した予防的措置として、2024年9~12月に計1.00%の利下げをしている点を強調しました。
こうした発言が「早期利下げに慎重」という印象も与えた内容となり、マーケットはややタカ派と捉えてドル円は上昇することになりました。
そしてトランプ大統領のことで質問がありましたが、「トランプ氏発言は我々の仕事に何ら影響しない」と発言しており、FRBの独立性を改めて主張して会見を終えました。
FedWatchは特にそこまで変わらない感じで推移しております。(年内3回)
日英貿易協定合意
トランプ氏、英国との貿易協定合意を発表-詳細は交渉継続
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-05-08/SVY6YWDWX2PS00
トランプ大統領が英国との貿易協定合意を発表しました。
追加関税の発表後、米国が貿易協定で合意するのは英国が初めてとなります。
合意内容は以下になります。
【英国→米国の輸出】
- 鉄鋼・アルミの25%関税を撤廃
- 自動車関税 27.5%→10%(上限10万台)
【米国→英国の輸出】
- 米国産牛肉などに対し、英国へのアクセスが改善
- 米国産エタノールに対する英国の関税撤廃
- 英国によるボーイング社製航空機の購入
- 税関手続きの簡素化
【維持される措置】
- 10%の相互関税は継続…
この発表を受け、ドル・株価が上昇するリスクオンの流れになりました。
英国に対しては10%の基準関税が維持されたままで合意となりましたが、これが今後の各国のモデルケースになるのか?という所です。
ただし英国は、米国からすると「貿易黒字国」になるので、合意形成も容易としてマーケットは捉えています。
ですので、「貿易赤字国」からするとモデルケースにはならないということですね。
今回、英国は自動車関税が譲歩され、米国側は「他国では同じ措置をとらない姿勢」を示していますので、赤字国の日本に関しては難しいかもしれません。
10日には米中の貿易交渉もありますので、引き続き注目です。
まとめ
2025/5/5〜週の騰落率は、
- (対ドル)ポンドのみ上昇
- (対円)ドル、ポンドが上昇
追加関税後に初めて合意となった「米英」が買い戻されました。
今週は米重要指標、その他の要人発言に注目です。
また現在の相場は、「関税・貿易」に関する突発的なヘッドラインに左右されていますので、引き続きリスクオン・オフの動きに注意が必要です。