
本記事では、2025年8月の為替市況について解説いたします。
テクニカル分析も重要ですが、FXは外貨と外貨の両替による取引で損益が発生します。
そのため週間レポートは、通貨の売買を促すきっかけとなるファンダメンタルズ(経済/金融の流れ)中心の見解となります。
各週の相場状況・重要トピックスについて解説します。
2025年8月11日~8月15日
①(月)ドル安
- ベッセント氏からの発言
- 日銀の金融政策が始まれば、自然に調整される
- 米国側は過度な円安を好んでいない発言
- ドル円147.348まで下落
②(月)ドル高&ゴールド安
- トランプ大統領発言
- 金地金の関税はかけない
- 中国に関して関税休戦90日延長
- リスクオンのドル高
- ゴールドの資金が移動
③(火)日本株高
- 最高値更新(先物43,375円)
- 日米合意の内容が反映されるという見方
- 中の輸入品に対する追加関税の一部の停止期限を延長
- リスクオン
④(火)ドル安
- 経済指標
- 米CPI前月比:予想+0.2% 結果+0.2%(前回+0.3%)
- 米CPI前年比:予想+2.8% 結果+2.7%(前回+2.7%)
- 米CPI前年比・コア:予想+0.3% 結果+0.3%(前回+0.2%)
- 米CPI前年比・コア:予想+3.0%結果+3.1%(前回+2.9%)
- 3%に上昇する予想
- 弱い結果だったのでギャップで下落
⑤(火)ドル安
- トランプ氏&アントニー氏発言
- パウエルFRB議長は今すぐ金利を引き下げなければならない
- 毎月の雇用統計発表を停止(四半期ベースに切り替えることを提案)
- 独立性懸念(政府の思い通りになってしまう)
⑥(水)ドル安
- ベッセント氏発言(利下げ観測)
- FRBは9月に0.50%の利下げを検討するべき
- 米金利は今より1.50-1.75%低いべきだ
- 日本はインフレ問題を抑える必要がある
- 植田日銀総裁と話をした
- 円高のシナリオ
⑦(水)ドル安&株安
- 15日米露会談について(事前に欧州首脳やゼレンスキー氏と話)
- 停戦がなければプーチン露大統領は厳しい結果に直面する
- 欧州首脳やゼレンスキー氏と非常に良好な電話会談を行った
⑧(木)ドル高
- 経済指標(PPI)
- 前月比:予想+0.2% 結果+0.9%(前回±0.0%)
- 前年比:予想+2.5% 結果+3.3%(前回+2.3%)
- 前年比・コア:予想+0.2% 結果+0.9%(前回±0.0%)
- 前年比・コア:予想+2.9%結果+3.7%(前回+2.6%)
- 3年ぶり大幅上昇
- 長期金利が上昇してドル買い
⑨(木)ドル高
- ベッセント氏発言
- FRBに指示を出していない
- FRBは0.25%の利下げから始め、その後加速させる可能性
- FRBは0.50%の利下げを行う可能性
- 前日の発言を軌道修正
⑩(金)ドル高→ドル安
- 経済指標
- 小売売上高(前月比):予想+0.5% 結果+0.5%(前回+0.6%)
- 小売売上高(前月比・コア):予想+0.3% 結果+0.3%(前回+0.5%)
- NY連銀製造業景気指数:予想±0.0 結果+11.9(前回+5.5)
- 瞬間的にドル高だったが失速
⑪(金)ドル高
- 経済指標
- ミシガン:予想62.0 結果58.6(前回61.7)
- 1年期待インフレ:予想4.4% 結果4.9%(前回4.5%)
- 5年期待インフレ:予想3.4% 結果3.9%(前回3.0%)
2025/8/11~は、二週連続で欧州通貨(GBP・EUR)が強い週となりました。
(オセアニア・資源通貨が売られた1週間でした。)
米CPI・PPIの強弱が入り混じり結果や要人発言などにより方向感がないレンジ相場となりました。
ドル円の値幅は約1.45円(145pips)となり、現在は147円前半を推移している状況です。
メイントピックスである、
- 「米CPI・PPI」
- 「ベッセント財務長官の発言」
- 「米露首脳会談」
についてまとめていきます。
米CPI・PPI
【CPI(消費者物価指数)】
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-08-12/T0VS8RGP9VD100
【結果】
- 前月比:予想+0.2% 結果+0.2%(前回+0.3%)
- 前年比:予想+2.8% 結果+2.7%(前回+2.7%)
- 前年比・コア:予想+0.3% 結果+0.3%(前回+0.2%)
- 前年比・コア:予想+3.0%結果+3.1%(前回+2.9%)
この弱い結果を受けてドル円は下落することになりました。
総合(青の折れ線グラフ)が3.0%と予想されていただけあって、前回と変化なしということが下落した要因となります。
前回から変化なしだったのは、「ガソリンなどのエネルギー」が安くなったことが要因とされています。
▼内訳
しかし、食品とエネルギーを除くコア指数の伸びが加速はしております。
コアサービスは輸送・医療分野・車のインフレがそれぞれ加速しましたが、指数への影響力が大きい住居費の伸びは横ばいとなりました。
要するに今回の結果は「モノの価格は落ち着きましたが、サービスに関しては上昇している」という状態です。
上記の結果から「関税による物価上昇圧力への懸念は和らいだ」とマーケットは捉え、利下げ観測が高まりドル売りが入った流れとなります。
【PPI(消費者物価指数)】
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-08-14/T0ZHK1GP9VD800
【結果】
- 前月比:予想+0.2% 結果+0.9%(前回±0.0%)
- 前年比:予想+2.5% 結果+3.3%(前回+2.3%)
- 前年比・コア:予想+0.2% 結果+0.9%(前回±0.0%)
- 前年比・コア:予想+2.9%結果+3.7%(前回+2.6%)
上記の【強い結果=早期利下げの観測が後退=米長期金利が上昇=ドル円は上昇】する流れとなりました。
株価は瞬間的に下落の流れとなります。
今回は3年ぶり大幅上昇として、企業の関税コスト転嫁を示唆した結果となりました。
▼内訳
「モノの価格より、サービス価格が上昇している」ということです。
予想+2.9%に対して結果+3.7%だったことがインパクト大でした。
さらに要因の一つにCPI(消費者物価指数)が前月と比べ、横ばいに推移していたことも要因としてあったと思います。
このPPIは来月のCPIの先行指標になりますので、このPPIの結果がそのまま反映するのであれば、来月発表のCPIでは高い数字が出る可能性があるとして、FRBの「利下げ観測が若干遠ざかった」という事になり、舵取りが難しい状況になってきているということです。
ベッセント財務長官の発言
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-08-12/T0WFMXGOYMTL00
【ベッセント財務長官】
- FRBは一連の利下げに進む可能性があると思う
- 9月の50bp利下げの可能性は高い
- 米金利は今より150-175%低いべきだ
- 労働省の雇用統計報告の停止は支持しない
- FRB人事に対しては民間部門の人材も検討している
- トランプ大統領が指名したFRB理事候補のミラン氏は最終的には辞任すると思う
- 日本はインフレ問題を抑える必要がある
- 植田日銀総裁と話をした
- FRBが大規模な国債購入(量的緩和)に戻る必要はないと考えている
- 米国の利回り曲線全体が低下する可能性がある
ベッセント財務長官は水曜日に以上の発言をしています。
まずFRBは50bpの利下げを検討すべきと発言。
ベッセント氏がFRBに対して発言することは、トランプ氏より控えていました。(米国売りになるため)
政策金利は少なくとも今より150bp低くあるべきだとの考えで、これまでで最も明確にFRBに利下げサイクルに踏み切るよう訴えかけておりますが、このような姿勢や発言が「利下げ観測」を高めた印象です。
そして日本について、「インフレ問題を抱えており、確実に日本からの波及がある」と発言。
日本銀行の植田和男総裁と話したと明らかにした上で、「私見だが、日銀は後手に回っており、利上げするだろう」と話をしていますが、これはある意味「日本に対してプレッシャー(円高)」をかけているように感じます。
これで日本が利上げを早めるとなると、「円高相場」になるので、水曜日から木曜日かけて一気に売られる流れにもつながりました。
しかし木曜日には上記の発言に対して軌道修正する事になりました。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-08-14/T0ZHJFGP493A00
【ベッセント米財務長官】
-
- FRBに指示を出していない
- FRBは25bpの利下げから始め、その後加速させる可能性
- FRBは50bpの利下げを行う可能性
- FRB議長のポストについては、その合理化を正当化できる人物が必要
- 金利モデルは利下げを示唆
水曜日に述べた内容に対して軌道修正をかけてきました。
中立水準は現行金利より150bp低いと指摘しただけで、「FRBに一連の利下げを要求しているわけではない」という内容になります。
しかしその中でも「9月の50bp引き下げは恐らく適切だろう」とあらためて発言。
このような内容を発言していたのもあり、木曜日はPPIの押し上げもありましたが、一部ドル円が上昇する後押しの材料にもなりました。
米露首脳会談
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-08-15/T11QQRGP493600
トランプ大統領は会談後に共同記者発表で「生産的だった」と話しつつ、ロシアが侵略するウクライナの停戦で合意できなかったと明かしました。
米国・ロシア側の発言のポイントは以下。
今回の米露首脳会談では合意はありませんでしたが、トランプ氏が「戦争終結はゼレンスキー大統領次第」とは発言しておりました。
そこで米国とウクライナが18日に会談する流れとなっております。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-08-16/T12SY0GP493400?srnd=cojp-v2
引き続き注目です。
2025年8月4日~8月8日
①(月)ドル高・株高
- 雇用統計ショックの調整相場
- ドルの売られすぎからの反発
- 9月の利下げがほぼ確定(99.2%)
- クーグラー理事の後釜はトランプの息がかかった人物
②(月)ドル安
- 金利低下
- 「利下げ観測」による金利低下の影響
- 148円から146.800付近まで下落
③(火)株安
- トランプ大統領発言
- 医薬品には、最終的には250%にする
- 半導体に関しても発表する
- 半導体株中心に下落
④(火)ドル安
- 経済指標
- ISM非製造業景況指数:予想51.5 結果50.1(前回50.8)
- 結果は予想を下回る悪い数字
- 雇用(Employment)の減少と、価格(Prices)の上昇
- インフレが再燃するのでは?
⑤(水)ドル安
- 要人発言
- FRBメンバー「利下げ」路線
- 目立った経済指標がなく金利動向に左右された
- ドル安が目立ち他通貨上昇
⑥(水)米株高
- Appleの米投資
- 1000億ドル(約14兆7500億円)を追加投資
- 米国内へのサプライチェーン移転を促進
- 新たな製造プログラムがある
- Apple株5.5%上昇
- 3指数揃って上昇
⑦(木)株高
- トランプ大統領発言
- 米国に輸入される全ての半導体に100%の関税を課す
- 米国内で製品を製造する企業には免除措置が与えられる
- 大手は関税による影響が出ない予想
⑧(木)ポンド高
- BOE政策金利
- 結果:利下げ(425bp→400bp)
- MPCは5人が0.25%引き下げを支持、4人が据え置きを主張
- タカ派の利下げということ
⑨(木)ドル高→ドル安
- FRB人事
- ウォラーFRB議長が次期議長として候補
- 基本的には長期金利を安定してドルへの資金流入を支える
- 長期的にみればドルを安定させるだろうとの見方
- クーグラーFRB議長の後任を「スティーブン・ミラン氏」
- トランプの息がかかった人物
- 現FRBを批判している状況
⑩(金)ドル高
- プーチン氏との直接会談
- 15日にアラスカで会談すると発表
- ウクライナでの戦争終結を目指し、停戦合意の仲介を図る
- リスクオンの流れ
当該週は、前週金曜日の雇用統計ショック後の動き・材料不足(指標や要人発言が少ない)など、方向感がないレンジ相場となりました。
ドル円の値幅約1.45円(145pips)となり、現在は147円後半を推移している状況です。
今回のメイントピックスである「FRB人事」「日米関税交渉の相違点」についてまとめていきます。
2025/8/4~週は、全面的にドル・日本円が売られ、ポンドが強い1週間でした。
ポンドはBOE金政策発表にて、MPC(金融政策員会)の委員9名で、据え置きと利下げをめぐり票が割れる前代未聞の珍事が発生。
- 4名が据え置き
- 4名が25bp(0.25%)の利下げ
- テイラー委員1名:50bp(0.50%)の利下げ
1回目の投票で決まらないという事態となりました。
最終的に、4名が据え置き、5名が25bpの利下げで薄氷の決着となっていますが、根強いインフレの再燃から追加利下げの見通しが大きく低下、金利は上昇に転じています。
FRB人事
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-08-01/T0BYBEGPL48M00?srnd=cojp-v2
クーグラー氏は前回のFOMCを欠席していたので、「辞任するのでは?」と言われていましたが、今秋から米ジョージタウン大学の教授に復帰する予定として、任期は26年1月まででしたが、FRB理事を辞任することになりました。
そして木曜日にクーグラー氏の後任が決まりました。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-08-07/T0N380GPWCL500
【トランプ米大統領】
- FRB理事候補にミラン氏を選出した
- ミラン氏は2026年1月31日までFRB理事を務める
- 後任の恒久的な人材探しを継続
トランプ大統領は8日付けで退任するクーグラーFRB理事の後任として、ミラン大統領経済諮問委員会(CEA)委員長を指名しました。
このスティーブン・ミラン氏に関しては、金融当局に対するトランプ氏の利下げ要求に同調している人物で、FRBの「集団思考」が政策運営上の一連の失策を招いたと指摘しています。
そして過去の発言から、「プラザ合意を再度行いたいのでは?」と受け止められる人物みたいで、今回であれば「マールアラーゴ合意(プラザ合意2.0)」の引き金になるかもしれないということでドルが瞬間的に売られたという流れになります。
※プラザ合意とは・・・1985年にG5(先進国5カ国:日・米・英・独・仏)の蔵相・中央銀行総裁会議で、ドル高を是正するために協調介入を行うことで合意した会合で、2年間でドル円が240円から120円まで下げました。
すぐの話では無いと思いますが、トランプ大統領の息がかかった人物ということはおさえておきましょう。
そして次のFRB議長が誰になるかの話も浮上してきました。
後藤達也氏の画像をお借りして共有します。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-08-07/T0MNGGGOYMTT00
PredictItのデータになりますが、6日の段階ではケビン・ハセット氏(NEC委員長)が有力候補に上がっていましたが、木曜日にはウォラーFRB理事が、トランプ大統領側近らの間で次期FRB議長の最有力候補に浮上しているとのことです。
関係者によれば、側近らはウォラー理事について、足元のデータではなく予測に基づいて政策判断を下そうとする姿勢や、FRB制度全体に関して深い知識を有していることを評価しています。
ウォラー氏に関して、今の局面では「利下げ」に傾いていますが、基本的には長期金利を安定させて、ドルへの資金流入を支えるとして長期的にみればドルを安定させるだろうと言われており、その人事に対しての信頼感として木曜日はドル高が続いていました。
引き続きFRB人事に関しては注目です。
日米関税交渉の相違点
赤沢経財相が、米国に関税措置の修正要求するために訪米して、ラトニック商務長官と90分間会談しました。
日米の関税交渉で食い違いがあるとのことです。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-08-06/T0L39LGOYMTM00
相違点が以下。
そして日本政府によると、既に15%以上の税率となっている品目には上乗せされず、下回るものは15%とする内容で折り合ったつもりでしたが、新たな相互関税の大統領令や6日公示予定の米連邦官報にその記載はなく、単純に15%を上乗せするという風になっているとのこと。
赤沢氏は「経緯を説明してもらい、合意した内容を実現するよう求める」と指摘しています。
そして米政権が日本時間7日午後1時1分に15%の相互関税を発動しました。
大統領令は、日本に15%を上乗せすると明記しただけで、日本が合意したとする相互関税の「特例」は反映されませんでした。
合意を急ぎ、妥結内容を文書として作成しなかった日本が想定しなかった15%の上乗せとなり、詰めの甘さを露呈しました。
現在は米国の閣僚と会談した結果、大統領令を適時修正する措置をとると説明があったと赤沢氏は明らかにしています。
また同じタイミングで自動車などの関税を下げるための大統領令を発出することも確認したと説明しました。
日米の共同声明を出す流れで話は進んでいる状況と言われています。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-08-07/T0GR7AGPFHQD00?srnd=cojp-v2
引き続き共同声明が出るのかに注目が集まります。